ネタバレ感想

映画『フルートベール駅で』ネタバレ感想・解説

 2020年にはジョージ・フロイド殺害事件があり、多くのデモや暴動が発生しましたが、白人警察官による黒人殺害事件はアメリカで長年繰り返されてきています。

 2009年の1月1日。22歳のオスカー・グラントという黒人青年が丸腰の状態で、白人警察官達に押さえつけられたまま射殺されました。当時も同じくデモや暴動に繋がっていますが、本作はオスカー・グラントの最後の1日を回想を含めて描いています。

完全主観評価

▶星0~1:製作側に意地悪された ▶星1.5~2:後悔 ▶星2.5~3:相性がやや悪いのか  ▶星3.5:楽しめた ▶星4: 楽しめた♡ ▶星4.5:ハリーポッター ▶星5:超ハリーポッター

映画『フルートベール駅で』

原題   : FRUITVALE STATION
製作年度 : 2013年
上映時間 : 85分
監督   : ライアン・クーグラー(初監督作品)
主演   : マイケル・B・ジョーダン
ジャンル : ノンフィクション

 ライアン・クーグラー監督とマイケル・B・ジョーダンは『クリード』シリーズやMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)の『ブラックパンサー』でもタッグを組んでいるコンビですが、その2人の初コンビ作品が『フルートベール駅で』
 クーグラー監督が大学生の時に発生したオスカー・グラント射殺事件ですが、クーグラー監督は事件後に友人や同僚からヒアリングを続けて作ったそうなので、おそらく事実にそれなりに忠実なノンフィクション映画なんでしょう。

 ちなみにマイケル・B・ジョーダンですが、われらがスーパースター、元NBA(バスケ選手)のマイケル・ジョーダンとは全く関係なし。
「あれ?バスケの神様は俳優もやってるんかね?」
と思う人もいるかもしれませんが、マイケル・ジョーダンは現役時代にはバスケと野球とゴルフ。今ではレストランのオーナーにジョーダン・ブランドのオーナー。そしてNBAチームのオーナーをしています。『SPACE JAM』という映画では俳優さんしちゃってますが。

あらすじ

 『フルートベール駅で』は実在の事件を題材にした作品です。
サスペンス映画ではなく”若くして殺害されたオスカー・グラントの最後の1日”を描いているので、途中までのあらすじと言うよりも事件の概要を簡単にまとめました。

2009年1月1日の年明け直後。白人の警官(ヨハネス・メセルレ)が丸腰の黒人(オスカー・グラント)を射殺する事件があり、容疑者は逮捕された。

 被害者のオスカー・グラントはフルートベール駅で、喧嘩の通報に応じて駆けつけた鉄道警察官らに電車から降ろされ、地面に押さえつけられた状態で無抵抗のまま撃たれました。電車はホームで停車したままで、多くの乗客が無抵抗のオスカーを押さえつける様子や銃で撃つところを撮影していたことがきっかけで、事件後はデモや暴動にも繋がりました。

映画『フルートベール駅で』のネタバレ感想

以下ネタバレ含みます

 『フルートベール駅で』で描かれるオスカー・グラントが決して特別な人間ではないという事。

 ガールフレンドと子どもがいるにも拘らず浮気をして開き直り。得た仕事は遅刻が原因で解雇され、過去には逮捕歴もあり薬物の売人で生計を立てていました。さて。新年を迎える前に薬物はすべて捨てて。新しい年になったら家族の為に働こう。そんなことを考えていたグラント。こういった人は”ダメな人”とか言われたりしますが、浮気は日本でも絶えずに行われていますし、おそらく芸能人は毎日のように自らに襲い掛かるおっぱいの欲求と文春との戦いを繰り広げてます。遅刻に関しては「一切したことがありません。」と言える人は稀でしょう。
 しかし、そういった人たちが”悪い”人間かと言われるとそうではないですよね。薬物を売っているアフリカ系アメリカ人は、薬物を売るのが楽しくて売人をしているわけではありません。それは、ソマリアにいる海賊にしても、貧困地帯で薬物を摂取する子ども達にしても同じことですよね。生きる為です。アメリカにおける黒人のポジションは想像以上に複雑。日本では警察官との接し方なんて親から教わりませんよね。

 ということで、白人警察官によって射殺された22歳のオスカー・グラントはハリウッドスターでもなければ殺人犯でもなく、アフリカ系アメリカ人の一般的な若者。『フルートベール駅で』の本編は85分と短く、ちょっと朝早く起きれた時にサッと観れるようなコンパクトさですが、映画はオスカー・グラントという一人の人物を丁寧に描けていて、短い時間でズシッと効きます。

 作中、アメリカにおける黒人の差別を直接的に描いたシーンや政治的なシーンは少ないですが、人種問題と黒人の境遇を感じさせるような、さりげないシーンが要所要所に混ぜられています。

 ライアン・クーグラー監督は、「人種差別をことさらに批判するものではない。」というコメントと共に「事件と無関係だと傍観している人達に観て欲しい。」とインタビューで答えていました。

映画化する事の意味


 アメリカの人種問題という現状を世界中に伝える事。この事件の被害者はハリウッドスターでもなく、殺人犯でもなく、ベイエリアで年明けに花火を見に行った多くの人たちの内の一人で、一般的なアフリカ系アメリカ人だという事。そして、時間の流れで事件を風化させないこと。
僕は『アイアンマン』も『ピーター・ラビット』も大好きですが、こういった映画には存在意義をビシビシ感じます。

 そういえば、僕の好きなNBA(プロバスケットボール)でも、選手が多くのメッセージを発信したり、デモ活動に参加するなどをしています。現状を変えるために行動をしているようです。
 もし自分が誰かの親なら子どもへの教育も一つの行動で方法の一つですよね。そんな方法の一つに、映画もあると思っています。オスカー・グラント三世射殺事件は誰にも望まれない残酷な事件ではありますが、アメリカにおける黒人の人権を見直す機会となりました。それは彼が単にほっぺを叩かれたり罵声を浴びせられたからでは無く、警察官に銃殺されたから。そして、その映像を多くの人が撮影し、世に知れ渡ったから。
 結果的にはデモ活動にとどまらず、暴動まで引き起こしてしまったのも事実ですが、そういった事を繰り返しながら世界は良い方向へ変わっています。昔の日本では街に凶器を持った人間がうろうろしていましたが、今ではあり得ません。昔のアメリカでは黒人は奴隷として買われて飼われて鞭打ちを受け強制労働をしていました。それが普通でした。現在ではそんなことはありませんよね。
 ドナルド・トランプが移民を抑制してどれくらいアメリカ人の雇用を増加させることが出来たのかは把握できていませんが、コロナ禍で失業率は依然として高いそう。それは当然か。経済大国アメリカこと自由の国アメリカ。アメリカに限った話でもありませんが、世界中が良くなる為に小さな戦いが日々繰り広げられているんですな。

銃をテーザーガンと間違えた白人警察化

 「テーザーガンだと思った」という理由で懲役二年。実質1年で出所というのはなかなか衝撃的。
 テーザー銃というのは映画でたまに見ることがある銃で、スタンガンの銃バージョンです。撃たれるとコードで繋がった拳銃本体から放電され動く事が出来なくなるそうですが、放電時間が長すぎたり、当たる場所によっては死亡する例も大いに存在する武器です。
拳銃と違い気軽に撃ててしまう割に、死亡するリスクもあるテーザー銃。個人的にはテーザー銃の存在意義すら不明ですが、テーザー銃だと思ったという理由で刑が軽くなるのも自由の国の怖い所。あきらかにテーザー銃すらも撃つ必要が無い状況に見えましたが。

タトゥーのパーマシーア

オスカーの背中の入れ墨にパーマシーア(palma ceia)の文字がありましたが、聞き馴染みのない言葉だったので調べてみると、どうやらアメリカの地名のようでした。

背後からの発砲についての疑問。

 本作を観ていてひとつ疑問に思っていた事がありました。
押さえつけられ、背後から打たれたオスカー・グラントですが、終盤の手術シーンでお腹側にも傷があり、さらに銃弾は体に残っていました。それを観た時に「いったいどういう事?」「背中から撃たれて、お腹にも傷があるのに弾は体の中?」と思いましたが、調べてみるとどうやら弾は貫通後に地面に当たって跳ね返り肺に到達していたらしいです。
 大勢の人に動画で撮影されていたので、地面に押さえつけられていたことは明らかですが、地面に押さえつけて発砲する事で殺傷率も高くなってしまっていたんですね。

白人警官のその後。

 オスカー・グラント三世を射殺した、ヨハネス・メセルレ(johannes mehserle)警察官は刑務所で約1年服役したのちに出所。

Mehserle’s now spending time with his girlfriend and two and half year old son in Los Angeles. He’s also looking to move back to the Bay Area, his attorney Michael Rains says, and is hoping to find work in sales or retail because, Rains told the paper, “because he’s so good with people.”

https://www.colorlines.com/

 2011年の海外の記事ですが、上記を簡単に要約すると、
“2歳の子どもと恋人とロサンゼルスで過ごしており、小売りや販売の仕事で生計を立てていきたいと思っている。弁護士によると、メセルレは人と関わることが得意。”ということでした。
 2009年の1月1日が事件当日なのでおそらく出所後の話でしょうか。
ちなみに“good with people”で“人と関わる事が得意”と訳すことができます。

映画『フルートベール駅で』あらすじ/ネタバレ感想のまとめ

超低予算で製作され、ライアン・クーグラーが大学卒業後すぐにメガホンを握った『フルートベール駅で』。オスカー・グラント三世射殺事件はアメリカでは暴動や抗議活動も行われた有名な事件ですが、日本では認知度の低い事件だと思います。

 マーベル・シネマティック・ユニバースのような映画も大好きですが、ただのエンタメでは無く、認知を広げるために。そして事件を忘れない為に映画を使うのも良い事かな思ってます。
 2020年にはジョージ・フロイドという黒人が白人警察官により窒息死させられる事件もありました。事件後、日本でも「Black lives matter」という言葉が広く知れ渡り、日本でもデモ行進などがありましたが、実はアメリカにて黒人が白人警察官から暴行を受ける事件は少なくありません。アメリカの黒人差別について、日本人が理解するのは難しいかもしれませんが、興味のある方はぜひ『13th -憲法修正第13条-』というドキュメンタリー映画も見てみてください。ネットフリックスで観れますよ。

最後に、黒人差別に関する映画のレビュー記事をまとめておきます。
興味のある方はぜひ。

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